こんにちは、DTMオタクのNomです。
「ミックスの基本はまずローカットから」と聞いて、とりあえず全トラックの低音を削っていませんか? 実は、目的を持たない「意味のないローカット」は、楽曲の迫力やパンチを奪ってしまう最大の原因になります。
例キック
ローカットなし
ローカット20hz
ローカット60hz(やりすぎ)
この記事では、以下の3つのことが分かります。表なども作成しているのでぜひ参考にしてみてください!
- DTMにおけるローカットの本当の意味と正しいEQの使い所
- マイク録音やギター回路におけるローカットの活用法とデメリット
- 各パート(ボーカル、ベース、ドラム)の具体的な処理の目安
この記事は、「ミックスをしていると音がスカスカになってしまう」「マイクのローカットスイッチを使うべきか迷っている」というDTM初心者〜中級者に向けて、実践的な解決策を提示する内容です。 なお、音楽のジャンルによって正解は変わるため、あくまで「現代のミックスにおける一つの基準」として参考にしてください。それでは、奥深いローカットの世界へご案内します。
なぜDTMでローカットが必要?意味と仕組みの概要を解説
ここからは、そもそもなぜミックスにおいてローカットが必要とされるのか、その根本的な理由や録音時の注意点など、基礎的な概要を解説します。 結論から言うと、各楽器の美味しい帯域を活かすために、不必要な低音の濁りを取り除くことが最大の目的です。
EQによるローカットがミックス全体に与える影響
イコライザー(EQ)を使ってローカットを行う最大の理由は、
楽曲全体の「ヘッドルーム(音量の余裕)」を確保し、音圧を上げやすくするためです。
人間の耳は、同じ音量であれば高音よりも低音の方を大きく、圧があるように感じます。つまり、低音は少し鳴っているだけでも全体の音量メーターを大きく消費してしまうのです。
例えば、ピアノやアコースティックギターなど、一見高音メインに聞こえる楽器でも、実はマイクの吹かれや部屋の鳴りによって、20Hz〜100Hz付近の「耳には聞こえにくい不要な低音」が録音されています。これらが数十トラック重なると、低音域が大渋滞を起こし、マスタリング時に音圧を上げようとしてもすぐに音が割れてしまいます。
「でも、低音を切ったら音が細くなってしまうのでは?」と不安に思うかもしれません。確かにその通りで、切りすぎは禁物です。
しかし、主役となるベースやキックの居場所を作るためにも、それ以外の「上物(ウワモノ)」楽器の不要な低音を適切にEQでローカットすることは、クリアなミックスにおいて不可欠な作業なのです。
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とりあえずのローカットは音がスカスカになる原因?

「全トラックにとりあえず100Hz以下のローカットを入れる」というような、意味のない思考停止の処理は絶対にやめるべきです。
なぜなら、楽器が本来持っている「ふくよかさ」や「温かみ」まで削ぎ落としてしまい、結果としてミックス全体がスカスカで冷たい印象になってしまうからです。
「なぜここを切るのか」という目的意識を持ってEQを操作してください。
DTM初心者の頃、私も「低音は悪だ」と勘違いし、シンセサイザーやコーラスなどあらゆるトラックの低域をバッサリ切っていました。その結果、キックとベースだけが浮いて聞こえ、楽曲の一体感が全くないアマチュアっぽい音源が完成してしまったという苦い経験があります。
ネットや教則本には「まずはざっくりローカットしましょう」と書かれていることが多いので、迷うのも無理はありません。
しかし、ハイハットのようにそもそも低音が存在しない音や、楽曲の重心を支えるパートまで杓子定規にカットするのは間違いです。
マイクのローカットスイッチのデメリットとは?
コンデンサーマイクなどについている「ローカット(Low Cut)スイッチ」は、便利な反面、大きなデメリットも潜んでいます。
ハードウェアのスイッチで一度カットして録音された音声は、後から「やっぱり低音が足りない」と思っても、失われた情報を綺麗に復元することが極めて困難だからです。
エアコンの動作音や、外を通るトラックの振動(暗騒音)、ボーカルがマイクに息を吹きかけてしまう「ポップノイズ」を防ぐために、このスイッチは重宝します。しかし、マイクによっては80Hz〜100Hz付近からかなり急峻なカーブでカットされてしまうものがあります。これを知らずにオンのまま男性ボーカルやアコースティックギターを録音すると、本来の太さや艶が消え、ペラペラな音で録音されてしまいます。
「でも、ノイズが入るよりはマシなのでは?」と思う気持ちもわかります。
ノイズ対策は、ショックマウントやポップガードの導入など、物理的な環境改善を優先すべきです。その上で、マイクの特性をしっかり理解していない場合は、録音時はスイッチをオフ(フラット)にしておき、ミックスの段階でプラグインEQを使って細かくローカット(Low cut)する方が、圧倒的に自由度が高く失敗しません。
【楽器別】ローカットの実践的なやり方と注意点
ここからは、DTMにおける主要な楽器・パートごとの具体的なローカットのやり方と目安を解説します。 全体像として、「主役となる低音(キック・ベース)」と「それを邪魔しない上物(ボーカル・ギターなど)」という役割分担を意識して読み進めてください。
ボーカルのローカット選択肢とその理由

ボーカルのローカットは、「声の太さ」を失わないギリギリのラインを見極めることが重要です。
足音や空調のノイズ(暗騒音)、マイクへの吹かれ(ポップノイズ)を消すために超低域のカットは必須ですが、切りすぎると声の魅力そのものが失われるからです。
一般的な男性ボーカルであれば80Hz〜100Hz付近、女性ボーカルであれば60Hz〜80Hz付近から緩やかなカーブでカットを始めます。声の「胸の響き(チェストボイス)」や「温かみ」は100Hz〜250Hz付近に多く含まれています。ここを「ボーカルだから」と一律に150Hzなどでバッサリ切ってしまうと、オケに馴染まない細く機械的な声になります。
私の経験上、静かなバラードや弾き語りのような曲調では、あえて「ボーカルをほとんどローカットしない」ことで、息遣いや生々しさを強調できる場面が多々あります。
「でも、ノイズが残ってミックスが濁るのは避けたい」と思うかもしれません。
だからこそ、ソロで聴くのではなく、オケと混ぜた状態でローカットの周波数を徐々に上げていき、声の太さが失われる一歩手前で止める、という耳に頼った判断が不可欠です。
ドラム|Dtmのドラム(キック)はどこまでローカットすべきか
キックドラムのローカットは、楽曲のジャンルとベースとの棲み分けによってカットする帯域を決定します。
例キック
ローカットなし
ローカット20hz
ローカット60hz(やりすぎ)
キックの超低域(サブベース帯域)は楽曲の土台を支える強力な要素ですが、処理を誤るとミックス全体の音圧を不必要に消費し、モタつきの原因になるからです。
EDMやヒップホップなど、低音が主役のジャンルでは、キックのローカットは20Hz以下にとどめ、サブベース成分をたっぷり残すのが主流です。
一方で、ロックやポップスにおいて生ドラムの質感を出しつつタイトにまとめたい場合、30Hz〜50Hz以下をカットすることで、モタつきを無くしアタック感を強調することがあります。
「キックの低音を削ると迫力がなくなるのでは?」と不安になるのは当然です。
しかし、キックの「ドン」というアタック感(芯の部分)は意外にも60Hz〜100Hz付近に存在することが多いのです。不要な超低域だけを狙ってカットし、美味しい帯域を残すことで、かえってキックの輪郭がはっきりし、ミックス全体にパンチと迫力が生まれます。
ベース|Dtmにおけるベースとローカットの棲み分け
ベースのローカットは、アンプの不要な唸りを取り除き、キックドラムとの帯域の衝突を防ぐために行います。
ベースの最低音以下の超低域は、人間の耳には音階として認識しづらく、ただの「部屋の鳴り」や「濁り」としてミックスを邪魔してしまうからです。基本的には30Hz〜40Hz以下を緩やかなカーブでローカットし、無駄なエネルギーを削ぎ落とします。
さらに重要なのがキックとの棲み分けです。キックの美味しい帯域(アタックの芯)が60Hz付近にあるなら、ベース側の60Hz付近をピンポイントで少し下げます。逆にベースの重心を100Hz付近に置くなら、キックの100Hz付近を少し下げる(EQ処理する)といった具合に、パズルを組み合わせるように配置します。
「ベースは低音担当なのだからローカットはしない方が良い」と考える人もいるでしょう。
しかし、楽曲の土台だからこそ、不要な超低域の処理とキックとの連携を意識することが不可欠です。互いに邪魔しないポイントを見つけ出すことが、クリアでタイトな低音部を構築する成功の鍵となります。
ギター|ギターのローカット回路とコンデンサがもたらす抜けの良さ
ギターは、DTM上のEQ処理だけでなく、本体の回路(コンデンサ)によるローカットも抜けの良さに直結します。
ギターは中域がメインの楽器ですが、低域にはキャビネットの箱鳴りやミュート時の「ゴン」という不要な膨らみが含まれており、これがベースやキックの帯域を激しく邪魔するからです。DTMでのミックス時、アコースティックギターやエレキギターのバッキングトラックは、80Hz〜120Hz以下を思い切ってローカットします。
また、ハードウェアの観点から言うと、エレキギターのボリュームポットに特定の容量のコンデンサ(0.001μFや0.0022μFなど)を配線する「ローカット回路(ハイパスフィルター)」を組み込む改造も有効です。ボリュームを絞った時に低音がスッキリとカットされ、チャカチャカとしたカッティングに最適な、煌びやかで抜けの良いサウンドになります。
「ギター単体で聴くと低音がなくなりペラペラに聞こえてしまう」と心配する方も多いでしょう。
しかし、ミックスはアンサンブルが全てです。ベースとキックが鳴っている状態で聴けば、ギターの低音は全く必要ないことに気づくはずです。アンサンブル全体での抜けの良さを最優先に考えてください。
シンセ・上物|バストラックを用いた効率的なローカット処理
シンセサイザーやコーラスなどの「上物(ウワモノ)」は、バストラック(グループ)にまとめてローカットを行うと効率的かつ全体のまとまりが出ます。
個別のトラックごとに細かく設定するよりも、上物全体としての低域の広がりを管理しやすくなり、キックやベースのためのヘッドルームを確実に確保できるからです。ドラムとベース以外の楽器を一つのバスチャンネルに送ります。アナライザーで確認すると、全くローカットしていない状態では、予期せぬ低音の膨らみ(ノイズや不要な倍音)が重なり合って「結構出ている」ことが視覚的に分かります。ここにEQを挿し、100Hz〜150Hz付近から下をローカットして一番下の不要な山を削っていきます。ただし、上物の中でもギターなど特定の楽器の美味しい帯域が削れすぎる場合は、バスでの処理は緩めにし、ギターは個別に(別で)調整を行うといった柔軟な対応が必要です。
上物の不要な低音を整理することは、ミックスの透明感を劇的に向上させます。各トラックの状況を見極めつつ、バスチャンネルでのまとめたローカットも活用して、自分の楽曲に合った最適な塩梅を見つけてください。
【早見表】各パート別・ローカット周波数の目安と目的
以下の表は、一般的なポップスやロックにおけるローカットの目安です。ジャンルや録音状態によって最適な数値は変わるため、あくまで「基準」として活用し、必ず自分の耳とアナライザーで確認しながら調整してください。
| 楽器・パート | ローカットの目安帯域 | 主な目的・理由 | 処理時の注意点・デメリット |
|---|---|---|---|
| ボーカル | 60Hz〜100Hz | 足音、空調ノイズ、ポップノイズ(吹かれ)の除去 | 切りすぎると声の「胸の響き」や温かみが失われ、機械的な音になる |
| ベース | 30Hz〜40Hz | アンプの不要な唸りを消し、輪郭をタイトにする | キックドラムの美味しい帯域(60Hz付近など)との棲み分けを意識する |
| キックドラム | 20Hz | 超低域のモタつきを抑え、アタック感を強調する | EDMなど低音が主役のジャンルでは、サブベースを残すため切りすぎない |
| アコギ・ギター | 80Hz〜120Hz | ボディの不要な共鳴や、アンサンブルでの低音の濁り防止 | 単体でペラペラになっても、アンサンブル全体での抜けを優先する |
| シンセ・上物 | 100Hz〜150Hz〜 | ベースやキックの居場所(ヘッドルーム)を確保する | バストラックでの一括処理も有効だが、特定楽器が削れすぎないか注意 |
まとめ:DTMのローカット
ミックスにおける「ローカット」は、楽曲のクオリティを決定づける最も重要で、かつ最も繊細な作業です。
低域の処理を誤れば、音圧が上がらない濁ったミックスになるか、迫力のないスカスカなミックスになってしまうからです。
「ボーカルだから切る」「とりあえず100Hzで切る」というようなマニュアル通りの処理ではなく、キックとベースの棲み分けを意識し、マイクの特性を理解し、時にはあえてローカットしない勇気を持つことが大切です。
最初はどこまで切ればいいか分からず、正解が見えないと悩むこともあるでしょう。
だからこそ、信頼できるEQプラグインやアナライザーを活用し、色々なプロの音源と聴き比べながら実験を繰り返してください。意味のあるローカットをマスターすれば、あなたのDTMスキルは確実に一つ上のステージへ進むはずです。まずは今のミックスプロジェクトを開いて、設定を見直してみましょう。


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